三重県鈴鹿市で発展した伝統技術「伊勢型紙」。着物の図案を染めるために手彫りで生み出される繊細で美しい文様を、現代のライフスタイルに合わせて日常的に楽しめる商品をフェリシモプランナーが企画。
日常を美しく彩りながら、日本の手仕事を未来へとつなぐ、プランナーのこだわりと文様に込められた深い意味をインタビュー形式でご紹介します。

株式会社オコシ型紙商店
大正13年(1924年)の創業以来、培ってきた高い美的感覚と、その時折の流行を取り入れた繊細で美しい手彫りの伊勢型紙「OKOSHI-KATAGAMI」を製造・所有しています。
あらゆる意匠やデザインを柔軟に吸収・創造・進化させながら、日本の文様や文化を型紙に投影し、伝統的な伊勢型紙の持つ力によって、人々の暮らしを明るく彩るものづくりを展開しています。
伊勢型紙の美しさを、現代の日常に。
繊細で、見ているとなんだかうっとり心が落ち着く伊勢型紙の文様。
着物の図案を染色するために手彫りで掘り抜いて作る、三重県鈴鹿市で発展した伝統技術です。
その美しさに魅了され、今回 el:mentプランナーが企画したのは伊勢型紙の文様を取り入れたワンピースとイヤアクセです。
プランナーにインタビューを行い、どういった思いで企画をスタートしたのか、商品のこだわりや今後の日本の伝統について思いを語ってもらいました。

ー今回「伊勢型紙」を商品に取り入れようと思った理由を教えてください。
ープランナー
もともと日本の伝統、とりわけ浴衣や着物などに関心があり、プライベートで着物を染める体験に行ったりもしていました。
ただ、着物にまつわる産業は衰退傾向にあり、伝統技術もどんどん失われていっているという現状もあります。
そこで、着物の染色に使用する「伊勢型紙」をより日常遣いしやすいアイテムに取り入れることで、少しでもそういった産業や技術を知ってもらう機会になるのでは、と考えました。
ー実際に三重県鈴鹿市のオコシ型紙商店さんのギャラリーに足を運ばれ、使用する文様をセレクトされたんですよね。
ープランナー
1万柄近くもの文様の中から選ばせていただきました。
どれも大変美しく、目移りしてしまい悩みましたが、数多くの見事な意匠に触れることができ、非常に有意義で楽しい時間を過ごさせていただきました。

クレマチスの唐草文様。着物をイメージしたさらりと着やすいワンピース

ー伊勢型紙の文様を使用した商品のひとつめは、こちらのワンピースですね。
ープランナー
ワンピースに使用させていただいたのは鉄線唐草(てっせんからくさ)文様です。
しなやかで強靭な蔓を持つ「鉄線(クレマチス)」を、無限の繁栄を象徴する「唐草」の形式で描き出した、非常に縁起がよい文様です。
花々を繋ぐように画面全体に広がる蔓の曲線は、生命の連鎖や永遠の繁栄を意味する唐草文様です。
途切れることなくうねり、新しい芽や葉を広げていくさまは、人とのつながりや、未来への希望、幸福を象徴しています。
その文様の意味合いから、花嫁衣裳の着物にも使われることもあるんですよ。

ーひとつひとつの文様に深い意味が込められているのですね。ワンピースのデザインで工夫した点もお聞きしたいです。
ープランナー
衿もとの重ねのデザインは着物をイメージしました。ワンピースの生地にはさらっとしたコットンレーヨン素材を使用することでこれからの季節も快適に着ていただけます。
美しいシルエットを作り、ゆったりと動きやすさや着心地のよさも実現するため、後ろにはタックを入れています。
落ち着いた青色とやわらかなチャコールグレーを掛け合わせてさわやかに着ていただける色味にしました。

軽やかに身に着けられる。耳もとに揺れる文様美
ーもうひとつの商品は、伊勢型紙の文様を使用したイヤアクセですね。
ープランナー
文様の繊細な美しさを表現したくステンレスを使用し、イヤアクセを作りました。
こちらも伊勢型紙の中から縁起のよい3つの文様をセレクトしました。

桜つなぎ、という文様は日本人が古来より愛してやまない桜を、単なる「花」としてだけでなく、命を繋ぐ「葉」とともに描き出した、生命力あふれる意匠です。
一般的に桜の文様といえば、ひらひらと舞い散る花びらの儚さをめでるものが多いですが、この「桜つなぎ」は「つなぎ文様」により決して途切れることのない力強い生命の連鎖を表現しています。
桜という「事の始まり」を祝う花が、どこまでも繋がっていくこの意匠は、持ち主の人生が隙間なく幸福で満たされ、大切な人とのきずなが鎖のごとく決して離れないように、という思いが込められています。

螺旋流水は、水の流れを表現していますがただ流れるだけでなく、中心からエネルギーを放ち、周囲を巻き込んで大きな幸福のうねりを作り出す様子を表しています。
螺旋は、古来より『上昇』と『再生』、そして運を引き寄せる『力の中心』を意味する縁起のよい形とされています。

有職亀甲(ゆうそくきっこう)は、正六角形を繋ぎ合わせた幾何学模様「亀甲」の中に、百花の王と称される「牡丹」を配した、格調高い文様です。
亀甲紋は、長寿の象徴である亀の甲羅に見立てられ、古来より「永遠の繁栄」と「無病息災」を願う吉祥の印として尊ばれてきました。
牡丹は「富貴(ふうき)」の象徴であり、その重厚な花びらが重なり合う姿は豊かさを表現しています。
亀甲という不変の器の中に、最高級の華やかさを持つ牡丹を閉じ込めたこの文様は、単なる美の追求に留まらず、手にした幸福が永遠に続くようにという深い祈りが込められています。

ー繊細で美しい伊勢型紙の文様が精巧に表現されていますね。
ープランナー
エッチング(金属の表面などを溶かして削る加工技術)で文様の細部まで繊細に表現しました。
オールステンレスなので、軽やかで水による変色がしにくくさびにくいのでお手入れも簡単で、日常遣いしていただきやすいです。

装うことで、日本の未来を支える力に
ー今回の企画のスタートでもある、日本の伝統産業・工芸・文化を知っていただきたい、応援したいという気持ちからこちらの2商品にはニッポン伝統応援基金がついていますね。基金への思いや、伝統産業への思いを教えてください。
ープランナー
各地の伝統や技術について職人さんからお話を聞くのが本当に好きなんです。
工房によって全然違う「色」があるのも大きな魅力だと感じています。ただその一方で、後継者問題もあって職人さんの数自体がどんどん減っているという現状もあります。
実は以前、娘が切子細工について調べた時期があり、そのときに気づかされたのが、日々の生活の中に素敵なものがあって、実際にそれを使うことで興味が湧き、技術を知ることで次の世代にも伝わっていくんだな、ということでした。
伝統が息づく商品が身近にあること自体が、子どもたちにとっての興味や学びの入り口になるんですよね。
日本の伝統を暮らしに取り入れることは、文化を守るだけでなく、自分自身の感覚を豊かにしてくれると感じています。
さらにその用途を広げることで日本特有の美しく豊かな文化を、子の世代、孫の世代へと継承していく未来にもつながっていくと思います。
だからこそ、商品に「基金」を付けることで、まずは日本の伝統について知っていただき、暮らしに取り入れてもらうきっかけにしたいんです。
さらに、買ったあとも産地とお客さまの間に続いていく関係が生まれたらいいなと。
そこからまた新たな出会いが生まれて、例えば「次世代の職人を育てる」といった、未来への可能性にもつながっていくのではないかと期待しています。
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