「お坊さん、和菓子はもういいのでポテトチップスをください」。
そんな子どもらしい“わがまま”が届くことを、誰よりも喜んでいるお寺の人たちがいます。
お寺の「おそなえ」を、支援が必要な親子へ「おすそわけ」する「認定NPO法人おてらおやつクラブ」の今を伺いました。

松島 靖郎さん|認定NPO法人おてらおやつクラブ
おてらおやつクラブ代表理事。
奈良県安養寺(浄土宗)住職。大学卒業後、企業にてインターネット関連事業、会社経営に従事。
2010年、浄土宗総本山知恩院にて修行を終え僧侶となる。
2014年、「おてらおやつクラブ」をスタート。浄土宗平和賞、中外日報涙骨賞、グッドデザイン大賞などを受賞。
おてらおやつクラブとは

活動の原点は、2013年に大阪で起こった母子の餓死事件でした。
お寺には食べきれないほどのお供えがある一方で、日々の食事に困っている親子がいることに気づき、お寺の習慣である「おそなえ・おさがり」を支援が必要な家庭へ「おすそわけ」する活動が始まりました。

その活動についてフェリシモでお話しいただきました。
松島さん)
最初、3世帯くらいに送って「よし、できた」と思っていたんです。
でも支援団体の方に報告したら「全然足りません」と言われて。
自分が見えていたのは極々一部で、実際にはもっと膨大な数の「助けて」があることに気づかされました。
その現実に、自分の無力さを突きつけられて、すごく恥ずかしくなった。
それが全国へ活動を広げる原動力になりました。
お寺からの行き先を探すお供え物と食事を求める親子をつなげるために、松島さんはNPO団体とつながりを作ったり、同じようにお供え物の活用を探すお寺たちとつながりを持つことで、より多くの人におすそわけできる環境を整えてきました。
誰もがかけこめる「最後の砦」
おてらおやつクラブは誰もが駆け込むことができます。
行政のような「審査」がないため、 制度のセーフティネットから漏れてしまった人でも、LINEからすぐ申し込むことが可能です。
松島さん)
行政の支援は「ひとり親家庭である証明」などの厳しい審査が必要で、窓口で何度も同じ説明をさせられたり、心折れる工程が多い。でも「おてらおやつクラブ」は審査をしません。
助けが必要な人は、ダブルワークやトリプルワークで情報に触れる余裕すらありません。
だからこそ、LINEで「助けて」と一言送れば繋がれる、「最後の砦」としての場所が必要なんです。

松島さん)
困窮家庭では、外から荷物が届くこと自体が稀です。
だから、宅急便の「ピンポン」が鳴ると、子どもたちが玄関まで走っていくんだそうです。
「自分たちを思ってくれている誰かから何かが届いた!」と。あのチャイムの音は、社会との繋がりを感じる合図なんです。
おやつは単なる食べ物ではなく、子どもたちが「自分のことを思ってくれている人がいる」と実感し、子どもらしくいられる時間を取り戻す意味を持っているんですね。
やってあげたを「手放す」
おてらおやつクラブのおすそわけには、どこから来たのか、お寺の名前なども書かれていません。
そこにもお寺ならではの思いが表れていました。

松島さん)
お寺の名前も出さず、誰から届いたか分からないからこそ、「やってあげた」という支援側の執着も手放せるし、受け取る側もフラットな気持ちで受け取れるんです。
特定の誰かへの感謝に縛られず、社会全体に見守られている安心感を受け取ってほしい。
だれかわからないことは、だれにでもできる活動だということなんです。
支援する、されるという関係性が重みにならないような匿名の仕組みによって、社会全体にあたたかく見守られている感覚を子どもたちが抱いてくれているのかもしれません。
「ポテトチップスがほしい。」支援の先にある景色

ある時、支援を受けた子どもから「和菓子はもういいので、ポテトチップスをください」という手紙が届きました。
松島さんは、この言葉をとてもうれしく受け止めたと言います。
松島さん)
困窮のなかでずっと大人の顔色をうかがって、甘えることを忘れていた子が、ようやく子どもらしいわがままをきかせてくれました。
それが本当にうれしいです。
10年続けてきて、かつておすそわけを受け取っていた子が大学生になり、『今度は助ける側になりたい』と発送会に来てくれたんです。
役割が変わって、これからつながっていくお母さん、お子さんに物を送ることができる。
そんなことも、このお寺という場所で発送しているからこそできているのかなと思います。
「たすけて」が絶えない今、あなたと広げたいおすそわけ
活動は広がりましたが、いまだに「たすけて」の声に対してまだまだ「おすそわけ」が足りていない現実があります。
1家庭に対して 1回の発送で終わらせず、継続して支えていくための費用も物資も不足しているのが現状です。
松島さん)
正直、全然足りません。
お寺だけでは限界があるから、企業さんや皆さんと連携して、誰もがおすそわけできる世界を作りたい。
子どもが子どもでいられる時間は短いから、その間に一回でも多く、自分を思ってくれる人がいる体験を届けたいんです。

フェリシモでは、これまでに2,500箱もの「お供えギフト」をお客さまのご支援のもと届けてきました。
顔の見えない誰かを思う想像力が、孤独を解きほぐす薬になります。
子どもたちがもっと自由に「ポテトチップスがいい!」と言える社会を、一緒につくっていきませんか。
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