見ているだけでうっとりしてしまうような、美しいマーブル模様の小物トレイとおさかなチャーム。
実はこれ、ほぼ100%が海洋プラスチックごみからできているんです。
今回ご紹介するのは、フェリシモの「ミ三3研究室」とコラボで商品を制作いただいた、アップサイクルブランド「buoy(ブイ)」。
広報担当・小林輝星さんに、その想いを伺いました。

小林輝星さん
海洋プラスチックごみから、工芸品のような美しい商品を生み出すbuoyの広報担当。プラスチックとの新しい向き合い方を提案しています。
海洋ごみから作る「捨てられないプロダクト」に込めた思い
ーマーブル模様が美しいbuoyの商品ですが、あらためてどのような商品なのでしょうか?
私たちは、「捨てられたプラスチックから捨てられないプロダクト」を生み出すという、海洋プラスチックのアップサイクルブランドです。
実は、buoyはもともとプラスチックメーカーから生まれたブランドなんです。
プラスチックの製造に携わってきた私たちだからこそ、世の中を良くしようと作ってきた素材が、今や悪者扱いされてしまっている現状に、悲しさや責任を感じていました。
そこで、海岸で回収したプラスチックごみを100%原料にして、世界に一つだけの模様を生み出すbuoyが誕生したんです。

ー最近は「脱プラスチック」という言葉も耳にしますよね。そもそも、プラスチックとはどんな素材なんでしょうか?
意外かもしれませんが、プラスチックはもともと「象牙の代用品」として開発されたんですよ。
昔はビリヤードの玉に象牙が使われていて、象が乱獲される原因になっていたんです。
それを解決するために、人の手で作れる素材として生まれたのがプラスチック。
つまり、最初は「自然を守るエコ素材」として誕生したんです。
ー なるほど…プラスチックにも、もともとは環境を守る役割があったんですね。
はい。
しかも軽くて丈夫、水に強くてサビない。電気を通さないので家電にも使われていて、私たちの暮らしを支えてきた素材なんです。
でも、その便利さゆえに大量に使われるようになり、「使い捨て文化」につながってしまったんですね。
個性の豊かなマーブル模様が生まれるまで
ー海に捨てられているプラスチックには、どんな問題があるのでしょうか。
実は、海のごみは回収してもリサイクルしにくいという課題があります。
プラスチックの種類がバラバラで、破片も多く、分別ができないんです。
しかも、塩や砂、さびなどが入り込んでいると、再利用がさらに難しくなります。
そのため、海洋プラスチックごみの多くは、燃やすか埋め立てるしかなかったんです。
ーそんなにむずかしいものなんですね。buoyはどのようにその問題を克服したのでしょうか。
buoyの商品は、すべて手作業で成形しています。
拾ったごみの中には何度で溶ける素材が入っているのかがわからないので、その都度熱をかける温度を変えたり、時間を変えたり、調整しながら成形しているんです。
試行錯誤の末、異なる素材を分別することなく成形することができる技術を開発しました。
普通のプラスチック製品は大量生産ですが、buoyはまさに一点もの。
職人の目と手でつくられているからこそ、「工芸品」と呼べる仕上がりになるんです。


ーなるほど、通常プラスチックに使われない手間がかかって美しさが生み出されているんですね。
はい、ここまで手間をかけて生み出しているのは、プラスチックへの愛ゆえだと思っています。
地域ごとに違う色と模様の秘密
ー 原料となるプラスチックごみは、どうやって集めているんですか?
全国の回収団体さんから、素材として購入しています。
拾われた地域ごと・色ごとに分けて管理していて、商品には「どの地域で回収した素材か」や「回収した団体の情報」も記載して販売しています。
ー 全国から集めても混ぜずに、地域ごとに商品にするのはなぜですか?
それぞれの地域にある魅力や、ボランティアの方々の思いも一緒に伝えたかったからです。
その土地ならではの色合いが出るので、地域の模様として楽しんでいただけるんです。
ー取られた場所によって色や模様に特徴が出るんですか?
はい、色味や分類の基準も異なります。
たとえば、オレンジを赤とするのか黄色とするのか、それともオレンジはオレンジでわけるのかなど、団体さんの感覚にお任せしています。
厳密に決めず、あえて「その地域らしさ」を尊重しているんです。

ーなるほど、地域ごとに特色があるのも、また工芸品のような魅力ですね。回収団体さんとはどのような方々なのでしょうか。
多くはその地域に住むボランティアの方々です。
特に日本海側では、人口減少や高齢化の問題もあって、ごみ処理がむずかしくなっている地域もあります。
中にはもう拾う人がいない地域もありますし、ゴミを処理するのにもお金がかかるので、処理費用がないからもうごみを拾わないでくださいと制限かけられてしまうところがあったりします。
そんな中でも、こどものころに遊んでいたきれいな海を取り戻したいと、ごみ拾いを日課にしている方もいらっしゃるんですよ
ー子どものころということは、数十年の間で海の様子が変わってしまったんですね。
そうなんです。
人の暮らしが自然に与える影響の大きさを実感しています。


これからのために
ー小林さんご自身は、海洋ごみやプラスチックについて、どのように向き合ってこられたのですか?
もともと大学では環境問題を学んでいたので、昔は「できるだけプラスチックを使わない生活」を心がけていました。
野菜はスーパーではなく八百屋さんで、肉はお肉屋さんにシリコンバッグを持って行く、というように。
でも、buoyと出会って「プラスチックって、こんなに人の心を動かせる素材なんだ」と気づかされて、改めて海洋ごみについて学び始めました。
ーbuoyとの出会いがプラスチックへの考え方が変わったんですね。
はい。
プラスチックでも紙でも、使い捨てれば「ごみ」になります。
大切なのは、「長く使いたくなるモノを選ぶこと」。
buoyのような製品を通して、「モノに愛着をもち大切に使う」ことの価値や楽しさが伝われば嬉しいです。
そしていつか、「もうbuoyを作る素材がなくなったね」と言える日が来たら、本当にしあわせです。
(関連商品の詳細ページは6/18よりご覧いただけます。)
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